チーム

Kana Hihara

プロジェクトマネージャー

企業のカルチャーの重要性:日本で働くクロスカルチャーの若者の視点から。

このほど、ザ・プラントという東京のソフトウェア企業で新たなキャリアを始めるチャンスを得ました。まだ入社して日が浅いのですが、入社してからの過去3ヶ月で、これまでになく職場のカルチャー、特に日本の職場のカルチャーについて考えさせられました。ザ・プラントでは、創業の地である日本ならではの独特の働き方ができます。しかし同時に、この働き方の根底にあるのは、複数の文化が共存する中で育ってきた私の心にも響く価値観です。私は、日本人の父と台湾人の母の元で、東京で生まれ育ちました。ずっとアメリカンスクールに通っていたので、母語は英語なのですが、アメリカに住んだのは大学の頃の2年間だけです。現在、母国に戻って働く中で、現在の所属先の会社に関して、そしてそれが私の現時点のアイデンティティーとどのような関係にあるかを、少し時間をかけて考えて、文章にしてみました。

ザ・プラントは、東京の閑静な住宅街に拠点を構えています。社屋はミニマリスト的な白いビルで、1階はミシュランの星を獲得しているスタイリッシュなスペイン料理店になっています。もともと2階分の住居だったものを、改装してオフィスにしています。様々な文化的な内装デザインを取り混ぜるような設計になっているようですが、私の見方ではよりモダンな日本の雰囲気を強く感じます。中に入ると、2階の会議室には美しい障子張りの窓があり、メインフロアの3階には大きな木製のデスク、そしてもちろんキッチンとビールがたくさん入った冷蔵庫があります。私がオフィスで最も気に入っているのは、木製のテラスです。また、庭にはオリーブ、アロエ、そして名前がわからないハーブが何種類か育っています。緑に囲まれたオフィスなのです。晴れた日には、時々パティオに座って、楽しく日光浴しながら仕事をしています。

オフィスのテラスにて

弊社自体、文化のるつぼとなっています。従業員の出身国は、韓国、中国、オーストラリア、アメリカ、タイ、カナダ、そして日本など、多岐に渡ります。オフィスでは英語を主に使用し、世界各地のオフィスを通して世界各地のブランド様の依頼に応えています。業務のカルチャーは、シリコンバレーのスタートアップのような感じで、フレキシブルタイムやリモート勤務が可能などのメリットがあります。オフィスの内装、従業員、そして業務のカルチャーからは、まさに国際的な雰囲気が伝わってきます。会社が私たちを既存の型にはめようとするのではなく、私たち自身の体験を通して会社を形作っていっているのです。

事業の面では、このように様々な背景を持つ従業員が集まっていることで、チームは対応範囲を広げ、他にはないアイデアを試すことができます。私の視点から言うと、様々な文化が混在していることで、より共感を持ってクライアントに寄り添える企業になっていると思います。共感は、ビジネスの場で重要なものです。なぜなら、共感できることで、様々な文化の慣習を理解し、それに柔軟に対応できるからです。世界各地のクライアントに対応する中で、節々に互いに助け合うことができます。また、インクルーシブな雰囲気がオフィスにあふれていることで、より責任感を持って働ける、フレンドリーで結束した環境が出来上がっています。そしてもちろん、最も重要なこととして、私たちはしばしば、仕事が終われば楽しいアクティビティーをしています。仕事がある日であっても、楽しいことを楽しもうという雰囲気があるということです。ザ・プラントで働くことで、日本ならではの体験ができるのと同時に、一旦オフィスに入ると、典型的な日本の職場環境とは大きく異なる体験ができるのです。

「かなちゃんは外人だからね」

過去に勤めた日本企業では、勤務時間中にこう言われることがしばしばありました。私はずっと日本で過ごしていましたし、日本のパスポートを持っています。だから、母国で外国人扱いされるのはおかしなことなのですが、私はその扱いに合わせていました。「外人」という免罪符を使う方が、色々と楽だったのです。敬語が完璧ではないことや、周囲に合わせようとしないことについての、便利な言い訳にしていました。必ずしも自分に合うわけではない環境の中で息がつまらないようにするためのカードになっていたのです。

私はここしばらくの間、文化とアイデンティティーについて考えてきました。日本で初めて就職した会社にいた頃、文化とアイデンティティーについて悩んでいました。私は日本人でもアメリカ人でもなく、さらに台湾人でもありません。私の母語は英語ですが、日本人の父は全く英語が話せず、台湾人の母は少し話せるだけです。私の日本語はネイティブレベルですが、日本のビジネスに対応できるレベルではなく、そのため私は外人扱いされました。外人扱いされていることを感じさせる出来事が、しばしば起こっていたのです。

しかし、ザ・プラントでの体験は違います。外国人のように感じさせられたことはなく、文化が混在する私の背景を歓迎し、文化が混在する私こそ本当の私である、というように考えられるようにしてくれたのです。台湾人と日本人のもとに日本で生まれ育った私は、子供時代インターナショナルスクールの友達グループとずっと「ジャピングリッシュ」を話し、『バフィー 〜恋する十字架〜』を見たり、バックストリート・ボーイズで一番セクシーだと思うメンバーについて熱を上げて話したりしていました。

毎年夏になると、私は地元の日本の学校に通い、毎日の教室の掃除や朝礼といった慣習に従って、学校生活を送りました。日本人の友達とは、最新の文房具について話したり、クラスで好きになった男の子について交換日記を書いたりしていました。このように両極端な文化が、あたかも別々の臓器のように、私の中で共存していました。私にとっては、それが普通でした。そうなろうとしたわけでもなく、自然体の私がそうだったのです。私は必ずしも特定の国家または文化に属するわけではありませんが、それでも文化が共存するという面白い境遇が今の私を作ったのであり、私は自分が頭の中に作った仮想の「国」に生きることになったのです。

Nate & Nampu

オフィスでビールを楽しむNateとNampu

その「国」が、まさにザ・プラントにあるのだと、私は考えています。自分の経験を振り返って、様々な点をつないでいくと、現在の職場のカルチャーや環境には、国際的な環境で育った私という個人に訴えかけるものがあるのです。同僚は皆、出身国も背景も異なりますが、オフィスにはアットホームな雰囲気が溢れており、誰もが歓迎されるこの環境の中で、全員が結束を深めています。やや日本的な内装からは、根っこは日本企業であるということが感じられるのですが、朝全員が出社して、ステレオスピーカーをオンにしてゆったりとしたジャズ音楽をかけ始めると、ザ・プラントはその真の姿となります。素晴らしい会社というのは、単に会社が素晴らしいというのではなく、従業員とそれぞれの独特の背景が素晴らしい会社を作っているのだということを、過去3ヶ月で私は学びました。

文責: Kana Hihara